枕の物語 vol.05
絶対の権力を持ち、生活のすべてにおいて贅沢の限りを尽くした中国清朝末期の西太后(1835~1908)は、さまざまな枕を持っていました。漢方薬やお茶の葉を入れた枕もあれば、昼間はクッションとして使う柔らかい枕、美容と長寿に効果があるといわれた玉(ぎょく)の枕など、現代人だって欲しくなってしまうような枕がめじろおしでした。 そのなかに一つ、奇妙な形の枕がありました。枕の中央に直径8センチほどの穴があいた枕で、横になって枕に頭をのせるとちょうど耳が穴にはいるのです。実はこれは「穴枕(別名・引枕)」と呼ばれ、中国では唐の時代(618~907)から使用されていたようです。 西太后がこの枕を、美容健康のために愛用していたのか、それとも気になる周囲の声や物音に聞き耳を立てるために使っていたのかは、定かではありません。